ラージアンの君とキス
2章:生きるか死ぬか - 8 -
シュナイゼルもあのラージアン達のように、襲いかかることがあるのだろうか……。
床に崩れ落ちるヨシ兄の姿が、脳裏に蘇る。暴力は見たく無い。
頬を長い指で撫でられ、びくりと肩が跳ねた。
「――夏樹」
「あ……」
大袈裟な反応をしてしまった。
気まずい思いで顔を上げると、額の信号を淡い紫に染めたシュナイゼルが、じっと夏樹を見下ろしていた。間近で見上げる信号には、金色の光彩が散って煌めいている。
――綺麗……。
誘われるように手を伸ばして、そろりと宝石のような信号に触れてみた。ほんのりと暖かい。ひんやりとしている身体とは違う。
触れた途端、淡い紫は濃い青色に変色した。思わずパッと手を離すと、その手をシュナイゼルに掴まれた。
「ごめんなさい! 嫌だった?」
「いや……」
シュナイゼルは戸惑ったように、夏樹の手を離した。
怒らせてしまったのだろうか……。
心配になってシュナイゼルの様子を見つめていると、夏樹の視線から逃げるように、ふいと顔を背けた。
無理やり正面から顔を覗き込もうとすると、今度は反対側に顔を背けられた。
――もしかして……、照れてる……?
信号の色は、濃い青色をしている。
もう少し明るい色合いの青は、考え込んでいる時の色だと、昨日シュナイゼルが教えてくれた。
濃い青色はどういう状態なのか不明だが、この状況から察するに、怒っているわけではなさそうだ。むしろ……。
「シュナイゼル」
「……」
「ありがとう。昨日から、何度も助けてくれて……」
「守ると約束した」
「うん」
「あの様子では、試合どころではないだろう。明らかに準備不足だ。夏樹に審判をさせるにしても、せめてチームと選手を決めておくよう、ディーヴァに伝えておこう」
「よろしくお願いします……」
夏樹は横抱きにされたまま、深く頭を下げた。
スタジアムをシュナイゼルと共に脱出した後、夏樹はそのまま家まで送ってもらった。
シュナイゼルは再びスタジアムへと戻って行ったが、夏樹は気疲れしてしまい、ベッドに横になるなり眠りに落ちた。
『マスター、シュナイゼルから通信が入っています』
アースの声に起こされた。
「ン……」
『繋いでも宜しいですか?』
「うん……」
『夏樹。ディーヴァが会いたいと言っている。いいだろうか?』
「判った……」
正直、今は顔を見たくないが、仕方ない。ここにいる以上、彼女の存在を無視することは不可能なのだから。
ため息をついて起き上がると、一階の玄関に向かった。ずらりと並ぶ顔ぶれを見て、思わず怯みそうになった。
思ったより人が、ラージアンが多い。
ディーヴァと、その後ろにシュナイゼルと恐らくカーツェ。更にもう一体いる。かなり体格のいいラージアンで、シュナイゼルよりも一回りは大きい。額に光る三角形の信号を見て閃いた。
――こいつ、ヨシ兄を殴ったやつだ……!
後じさる夏樹を見て、ディーヴァは勘違いしたように慌てて口を開いた。
「夏樹、ごめんね! さっきは本当に、怖がらせるつもりはなかったんだ」
「ディーヴァ……」
「ちゃんとチームと、選手を決めておくから。許してくれる?」
――ヨシ兄を殴ったのは、ディーヴァが命令したからだ。
「ごめんね、夏樹。怒らないで」
しかし、ヨシ兄を元に戻してくれたのもまた彼等だ。
シュナイゼルは優しいし、ディーヴァも強引ではあるが、こうして夏樹に謝りにきてくれた。全てに納得しているわけではないが、夏樹も歩み寄りを見せるべきなのかもしれない……。
第一、ここにいる以上、彼等と過ごすより他に道はないのだ。
床に崩れ落ちるヨシ兄の姿が、脳裏に蘇る。暴力は見たく無い。
頬を長い指で撫でられ、びくりと肩が跳ねた。
「――夏樹」
「あ……」
大袈裟な反応をしてしまった。
気まずい思いで顔を上げると、額の信号を淡い紫に染めたシュナイゼルが、じっと夏樹を見下ろしていた。間近で見上げる信号には、金色の光彩が散って煌めいている。
――綺麗……。
誘われるように手を伸ばして、そろりと宝石のような信号に触れてみた。ほんのりと暖かい。ひんやりとしている身体とは違う。
触れた途端、淡い紫は濃い青色に変色した。思わずパッと手を離すと、その手をシュナイゼルに掴まれた。
「ごめんなさい! 嫌だった?」
「いや……」
シュナイゼルは戸惑ったように、夏樹の手を離した。
怒らせてしまったのだろうか……。
心配になってシュナイゼルの様子を見つめていると、夏樹の視線から逃げるように、ふいと顔を背けた。
無理やり正面から顔を覗き込もうとすると、今度は反対側に顔を背けられた。
――もしかして……、照れてる……?
信号の色は、濃い青色をしている。
もう少し明るい色合いの青は、考え込んでいる時の色だと、昨日シュナイゼルが教えてくれた。
濃い青色はどういう状態なのか不明だが、この状況から察するに、怒っているわけではなさそうだ。むしろ……。
「シュナイゼル」
「……」
「ありがとう。昨日から、何度も助けてくれて……」
「守ると約束した」
「うん」
「あの様子では、試合どころではないだろう。明らかに準備不足だ。夏樹に審判をさせるにしても、せめてチームと選手を決めておくよう、ディーヴァに伝えておこう」
「よろしくお願いします……」
夏樹は横抱きにされたまま、深く頭を下げた。
スタジアムをシュナイゼルと共に脱出した後、夏樹はそのまま家まで送ってもらった。
シュナイゼルは再びスタジアムへと戻って行ったが、夏樹は気疲れしてしまい、ベッドに横になるなり眠りに落ちた。
『マスター、シュナイゼルから通信が入っています』
アースの声に起こされた。
「ン……」
『繋いでも宜しいですか?』
「うん……」
『夏樹。ディーヴァが会いたいと言っている。いいだろうか?』
「判った……」
正直、今は顔を見たくないが、仕方ない。ここにいる以上、彼女の存在を無視することは不可能なのだから。
ため息をついて起き上がると、一階の玄関に向かった。ずらりと並ぶ顔ぶれを見て、思わず怯みそうになった。
思ったより人が、ラージアンが多い。
ディーヴァと、その後ろにシュナイゼルと恐らくカーツェ。更にもう一体いる。かなり体格のいいラージアンで、シュナイゼルよりも一回りは大きい。額に光る三角形の信号を見て閃いた。
――こいつ、ヨシ兄を殴ったやつだ……!
後じさる夏樹を見て、ディーヴァは勘違いしたように慌てて口を開いた。
「夏樹、ごめんね! さっきは本当に、怖がらせるつもりはなかったんだ」
「ディーヴァ……」
「ちゃんとチームと、選手を決めておくから。許してくれる?」
――ヨシ兄を殴ったのは、ディーヴァが命令したからだ。
「ごめんね、夏樹。怒らないで」
しかし、ヨシ兄を元に戻してくれたのもまた彼等だ。
シュナイゼルは優しいし、ディーヴァも強引ではあるが、こうして夏樹に謝りにきてくれた。全てに納得しているわけではないが、夏樹も歩み寄りを見せるべきなのかもしれない……。
第一、ここにいる以上、彼等と過ごすより他に道はないのだ。