人食い森のネネとルル
3章:人食い森と追跡者 - 2 -
畑仕事を終えた後、黒いのも交えて納屋で作戦会議を始めた。
ここ最近、調査隊を遠巻きに観察し続けた結果、分隊で行動していることは把握している。順番に罠にかけようとネネが提案すると、ルルはきらきらと眩しい笑顔を浮かべた。
「私に任せて。一人残らず消してくるから。ね?」
「却下」
「えぇ? 何で?」
「当たり前でしょ。大勢の人間が行方も知れず消えたり、死んだら、余計怪しまれる。警戒されて、今度はもっと怖い部隊が送られてくるよ」
「でも、打って出るって……、他にどうするの?」
ネネはにやりと笑った。
「彼等本人が、もうこんな所いたくない、帰りたい……そう思ってくれればいいんだよ。勝手に逃げてくれたら、万々歳なわけだ」
「ふんふん……、なら、やっぱり私に任せてよ」
「何する気?」
身構えて問いかけると、ルルはきらきらと眩しい笑顔を浮かべた。
「まとめて洗脳すればいいんだ。人食い森は怖い、もう二度と立ち寄るものかってね」
「却下」
「えぇ? 何で?」
「というか……、そんなすごいこと、ルルに出来るの?」
「私に出来ないことはないの」
ルルは偉そうに胸を張った。
――コイツの自信は、どっから出てくるんだ……。
「まぁ仮に出来たとしても……、洗脳するには、対面する必要があるでしょ? 姿を晒 すと、周りに見られる可能性もあるし、向こうには祓魔師 がいるんだから。返り討ちにあったらどうするのさ」
「心配いらないよ」
「とにかく駄目」
「もう。あれも駄目、これも駄目って、じゃあどうするの?」
ネネはにやり笑った。ルルに向かって両手を上げると「わっ!」と大声を張ってやった。驚かそうと思ったのに、ルルは微塵も怯 まなかった。
「ネネ……、真面目にやってよ」
白けた眼差しを向けられて、カチンときた。
「生意気! ルルのくせにっ!」
「うわっ、酷くない? 人がせっかく真面目に相談に乗ってるのに」
「相談……?」
ルルの意外な言葉を聞いて、苛立ちは戸惑いに変わった。一人で生きてきたネネは、誰かに何かを相談したことなんて無かった。
「ネネ?」
無言でルルを見つめていると、よしよしと頭を撫でられた。前髪をするりとかき分け、露わになった額に優しいキスが落ちる。
「大丈夫だよ、私がついている……」
顔がカッと熱くなって、髪に触れている手を振り払った。
「別に、不安なわけじゃない。えっと、だからさ……、あいつらを脅かせばいいんだよ。思いっきり、容赦なく、身の毛もよだつくらいに」
「何それ、面白そう」
ルルは乗ってきた。ネネは「イヒヒッ」と笑うと、納屋にある道具をいろいろと作業台に並べてみせた。
「あいつらが行く先々に、罠を仕掛けておいてさ、人食い森を怒らせた、ここにいたら殺される……そう思わせればいいんだ」
黒いのも、賛同するように「ウァンッ!」と吠える。
「黒いのも、やるって」
「黒いのは駄目だよ、お前は綺麗だから……、見つかれば捕まえられちゃうよ」
「私と扱いが違う……」
ルルの不満そうな声を無視して、ビロードのような毛並みを撫でていると、黒いのは「キューン」と鼻を鳴らした。
「気持ちだけ、もらっておくね」
「獣じゃ役に立たないってさ」
ルルが意地悪く笑うと、黒いのは、ぐるる……と牙を剥いて威嚇した。ルルが悪い。
ここ最近、調査隊を遠巻きに観察し続けた結果、分隊で行動していることは把握している。順番に罠にかけようとネネが提案すると、ルルはきらきらと眩しい笑顔を浮かべた。
「私に任せて。一人残らず消してくるから。ね?」
「却下」
「えぇ? 何で?」
「当たり前でしょ。大勢の人間が行方も知れず消えたり、死んだら、余計怪しまれる。警戒されて、今度はもっと怖い部隊が送られてくるよ」
「でも、打って出るって……、他にどうするの?」
ネネはにやりと笑った。
「彼等本人が、もうこんな所いたくない、帰りたい……そう思ってくれればいいんだよ。勝手に逃げてくれたら、万々歳なわけだ」
「ふんふん……、なら、やっぱり私に任せてよ」
「何する気?」
身構えて問いかけると、ルルはきらきらと眩しい笑顔を浮かべた。
「まとめて洗脳すればいいんだ。人食い森は怖い、もう二度と立ち寄るものかってね」
「却下」
「えぇ? 何で?」
「というか……、そんなすごいこと、ルルに出来るの?」
「私に出来ないことはないの」
ルルは偉そうに胸を張った。
――コイツの自信は、どっから出てくるんだ……。
「まぁ仮に出来たとしても……、洗脳するには、対面する必要があるでしょ? 姿を
「心配いらないよ」
「とにかく駄目」
「もう。あれも駄目、これも駄目って、じゃあどうするの?」
ネネはにやり笑った。ルルに向かって両手を上げると「わっ!」と大声を張ってやった。驚かそうと思ったのに、ルルは微塵も
「ネネ……、真面目にやってよ」
白けた眼差しを向けられて、カチンときた。
「生意気! ルルのくせにっ!」
「うわっ、酷くない? 人がせっかく真面目に相談に乗ってるのに」
「相談……?」
ルルの意外な言葉を聞いて、苛立ちは戸惑いに変わった。一人で生きてきたネネは、誰かに何かを相談したことなんて無かった。
「ネネ?」
無言でルルを見つめていると、よしよしと頭を撫でられた。前髪をするりとかき分け、露わになった額に優しいキスが落ちる。
「大丈夫だよ、私がついている……」
顔がカッと熱くなって、髪に触れている手を振り払った。
「別に、不安なわけじゃない。えっと、だからさ……、あいつらを脅かせばいいんだよ。思いっきり、容赦なく、身の毛もよだつくらいに」
「何それ、面白そう」
ルルは乗ってきた。ネネは「イヒヒッ」と笑うと、納屋にある道具をいろいろと作業台に並べてみせた。
「あいつらが行く先々に、罠を仕掛けておいてさ、人食い森を怒らせた、ここにいたら殺される……そう思わせればいいんだ」
黒いのも、賛同するように「ウァンッ!」と吠える。
「黒いのも、やるって」
「黒いのは駄目だよ、お前は綺麗だから……、見つかれば捕まえられちゃうよ」
「私と扱いが違う……」
ルルの不満そうな声を無視して、ビロードのような毛並みを撫でていると、黒いのは「キューン」と鼻を鳴らした。
「気持ちだけ、もらっておくね」
「獣じゃ役に立たないってさ」
ルルが意地悪く笑うと、黒いのは、ぐるる……と牙を剥いて威嚇した。ルルが悪い。