ラージアンの君とキス
3章:宇宙戦争 - 11 -
何もやる気が起きず、ベッドにごろりと横になると目を閉じた。完全にふて寝である。
――シュナイゼルは、私のこと、どう思ってるのかな……。
知りたいような、知りたくないような……、複雑な気持ちだ。
少なくとも、嫌われていない自信はある。好かれているとすら思う。けれど、それがどんな種類のものかは判らない。
――ディーヴァに言われたから? 義務感だけじゃないと、思うけど……。
友情というよりは、護衛対象に寄せる保護欲。そんなところだろうか。いずれにせよ、夏樹が想うようには、想ってくれていないことは確かだ。
――ラージアンも、恋をしたりするのかな。
そう考えた瞬間に、目を見開いた。自覚しては、言葉にしてはいけないと思っていたのに、考えずにはいられない。
瞳を閉じていても、彼の姿を想い浮かべてしまう。最近では、シュナイゼルをかっこいいとすら思ってしまう。
姿も形も違うのに、やっぱり、シュナイゼルに寄せるこの気持ちは、どう考えても――”恋”。
「不毛だ……」
思わず声に出た。ばったりとうつぶせになり、枕に顔を埋めた。
――あぁ……。自覚しちゃった。どうにもならないのに……。
シュナイゼルに会ったら、どんな顔をすればいいのだろう。
今日は気まずい思いをさせてしまった。全て夏樹のせいだ。心配してくれているのに、一人で空気を悪くしている。
――避けたりしないで、一緒にいられる時は素直に楽しんで……、出来るかな。
悶々と悩んでいると、枕元に置いてあるサポートギアの電子音が鳴った。
『マスター、リリアンから通信が入っています』
「えっ?」
以外な名前を聞いて、一気に目が覚めた。
『繋いでも宜しいですか?』
「うん……」
『ナツキ。予定よりも早く対象惑星で戦争が始まりました。我々も参戦します』
「えっ!?」
『間もなく当艦は超速移動を開始します。既に準備段階に入り、これからコロニーを無重力空間に戻します。移動が終わるまで、ナツキを安全なシェルターに入れるよう、ディーヴァから指示されました』
「え……」
『時間がありません。今すぐ外に出てきてください』
「シュナイゼルは?」
『すぐに来ます。重力解除まで時間がありません。急いでください』
「判った」
飛び起きると、デニムにTシャツ、ウィンドブレーカーを羽織って、転がるように家の外へ飛び出した。外で待っていたリリアンは、夏樹を見るなり背中を向けて「こちらへ」と誘導する。
リリアンは電話ボックスのような、硝子張りの小部屋の扉を開いた。すぐに床が割れて、深い円形の滑り台が現れる。
「入ってください」
「でも……」
割れた床とリリアンを交互に見比べた。
まるで奈落の底へ落ちて行くような、暗い穴だ。ここに飛び込むのはかなり勇気がいる……。
「早く。時間がありません」
「シュナイゼルは?」
「後から来ます。早く」
「……」
本当に後から来るのだろうか。サポートギアの存在を思い出して、シュナイゼルに繋ごうとしたら、背中を押された。
「きゃぁ――っ!」
悲鳴を上げながら、真っ黒な穴を滑り落ちた。
ようやく落下が止まったと思ったら、無重力に浮いているような、心もとない感覚に包まれた。周囲は真っ暗で、何も見えない。
――ここがシェルター!?
いくら踏切が悪いからって、何も突き落とさなくてもいいのに。本当にシュナイゼルは後から来てくれるのだろうか……。
その後、しばらく意識を保っていたが、一向にシュナイゼルはやってこなかった。
最悪なことに、アースが反応しない。
五感の絶たれた空間で、夏樹は間もなく意識を手放した。
――シュナイゼルは、私のこと、どう思ってるのかな……。
知りたいような、知りたくないような……、複雑な気持ちだ。
少なくとも、嫌われていない自信はある。好かれているとすら思う。けれど、それがどんな種類のものかは判らない。
――ディーヴァに言われたから? 義務感だけじゃないと、思うけど……。
友情というよりは、護衛対象に寄せる保護欲。そんなところだろうか。いずれにせよ、夏樹が想うようには、想ってくれていないことは確かだ。
――ラージアンも、恋をしたりするのかな。
そう考えた瞬間に、目を見開いた。自覚しては、言葉にしてはいけないと思っていたのに、考えずにはいられない。
瞳を閉じていても、彼の姿を想い浮かべてしまう。最近では、シュナイゼルをかっこいいとすら思ってしまう。
姿も形も違うのに、やっぱり、シュナイゼルに寄せるこの気持ちは、どう考えても――”恋”。
「不毛だ……」
思わず声に出た。ばったりとうつぶせになり、枕に顔を埋めた。
――あぁ……。自覚しちゃった。どうにもならないのに……。
シュナイゼルに会ったら、どんな顔をすればいいのだろう。
今日は気まずい思いをさせてしまった。全て夏樹のせいだ。心配してくれているのに、一人で空気を悪くしている。
――避けたりしないで、一緒にいられる時は素直に楽しんで……、出来るかな。
悶々と悩んでいると、枕元に置いてあるサポートギアの電子音が鳴った。
『マスター、リリアンから通信が入っています』
「えっ?」
以外な名前を聞いて、一気に目が覚めた。
『繋いでも宜しいですか?』
「うん……」
『ナツキ。予定よりも早く対象惑星で戦争が始まりました。我々も参戦します』
「えっ!?」
『間もなく当艦は超速移動を開始します。既に準備段階に入り、これからコロニーを無重力空間に戻します。移動が終わるまで、ナツキを安全なシェルターに入れるよう、ディーヴァから指示されました』
「え……」
『時間がありません。今すぐ外に出てきてください』
「シュナイゼルは?」
『すぐに来ます。重力解除まで時間がありません。急いでください』
「判った」
飛び起きると、デニムにTシャツ、ウィンドブレーカーを羽織って、転がるように家の外へ飛び出した。外で待っていたリリアンは、夏樹を見るなり背中を向けて「こちらへ」と誘導する。
リリアンは電話ボックスのような、硝子張りの小部屋の扉を開いた。すぐに床が割れて、深い円形の滑り台が現れる。
「入ってください」
「でも……」
割れた床とリリアンを交互に見比べた。
まるで奈落の底へ落ちて行くような、暗い穴だ。ここに飛び込むのはかなり勇気がいる……。
「早く。時間がありません」
「シュナイゼルは?」
「後から来ます。早く」
「……」
本当に後から来るのだろうか。サポートギアの存在を思い出して、シュナイゼルに繋ごうとしたら、背中を押された。
「きゃぁ――っ!」
悲鳴を上げながら、真っ黒な穴を滑り落ちた。
ようやく落下が止まったと思ったら、無重力に浮いているような、心もとない感覚に包まれた。周囲は真っ暗で、何も見えない。
――ここがシェルター!?
いくら踏切が悪いからって、何も突き落とさなくてもいいのに。本当にシュナイゼルは後から来てくれるのだろうか……。
その後、しばらく意識を保っていたが、一向にシュナイゼルはやってこなかった。
最悪なことに、アースが反応しない。
五感の絶たれた空間で、夏樹は間もなく意識を手放した。